現在、首都圏などは世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、緊急事態宣言が発令されており、飲食店や旅館、ホテルなどを中心に深刻な影響を受けています。
私たちの生活様式にも緊急事態宣言は大きく影響し、最初の緊急事態宣言以降、市民権を得ている、いわゆる「テレワーク」、「リモートワーク」などの働き方の普及や大企業の働き方の変革(週休3日制や副業解禁)などで、毎日の通勤のために東京都心部などに住む必然性が薄れてきた労働者も少なくないと思います。
これは、国土交通省が上場企業を対象に実施したアンケートの抜粋ですが、85%以上の企業がテレワークを実施しており、統計結果からも明らかです。
そこで、今回ご紹介したいのは、地方や郊外への移住、引っ越しによる住環境の改善です。都心部は買い物や会社に近いなど便利な反面、不動産価格が高く、物価も高いという欠点もあり、少し郊外に引っ越すだけで、このようなデメリットが改善される可能性があります。
都心から大企業のオフィスが徐々に撤退
好むと好まざるとにかかわらず、企業の入居するテナントや本社ビルが地方に流出しています。これをいの一番に表明したのが、パソナグループで、兵庫県の淡路島に本社機能を移転しています。パソナ以外にも、多くの企業が不動産価格の安い地方や都心部ではない郊外に移転を検討しており、「東京都心にオフィスがなければ信用されない」、「資本金がたくさんなければ信用されない」という価値観は、もはや過去のものになりつつあるのかもしれません。
前出の国土交通省のアンケートによると、東京都内に本社を置く東証1部上場企業の実に4社に1社が、本社の移転や機能縮小を具体的に検討しているといいます。
しかし、本社の移転先は人気は、依然として東京都
しかし、移転先は、東京都内、しかも23区内が依然として根強く、まずは、賃料などのコストを現在よりも安くするという目的のみを達成すればよいという保守的な企業が多く見受けられます。東京都以外と回答した企業は全体の2割程度(首都圏3県を除外すると1割程度)となっています。
パソナグループは淡路島に本社機能移転、フォロワーも
中には思い切って、東京外、又は首都圏の外に移転を検討している企業も少なからずいて、こうした企業の移転に伴い、そこで働く従業員も企業とともに地方に移り住んでいくことでしょう。
1都3県の首都圏人口は概ね3800万人ですが、近い将来3800万人のうち、少なからず域外に人口が流出する可能性がありますが、たった1パーセントの流出でも、38万人(新宿区の人口を上回ります)、1割流出すると380万人となります。380万人といと、日本最大の政令指定都市である横浜市の人口をやや上回ります。
さて、次に、実際に東京都以外に本社機能を移転した上場企業の例ですが、
※東京都の本社機能を廃止・縮小した上場企業の一例ですが、今後、追従企業が出てくるか否かは、パソナなどの動向がおおきく影響するのではないでしょうか。
社名 | 移転先 | 理由、備考等 |
パソナグループ | 兵庫県淡路島 | 本社機能の1/4を移転 |
常磐興産 | 福島県いわき市 | 東京本社を廃止し、 スパリゾートハワイアンズ所在地を本社へ |
インフォメーション・ディベロプメント | 鳥取県米子市 | 本社機能の一部を移転 |
このほか、リクルートも本社ビルを売却(ただし、同ビルをリースするとのこと)しています。
※上場企業は移転にやや慎重な傾向がありますが、中小零細、個人事業主など、フットワークの軽い小さな企業は、早々と都心のテナントを放棄し、不動産価格の安い郊外に移転する動きを強めています。
田舎暮らしのメリット・デメリット
様々なメリットがあり、デメリットもないとは言えませんがなんといっても住居費の安さが最大の利点といえます。
メリット(一例)
- 家賃・物件価格の安さ
- 自然が堪能、ストレス軽減
- 仕事のストレス軽減
デメリット(一例)
- 交通の便が悪い(職場から遠い)
- 買い物や病院などの利便性が悪い
次のデータはREINSの中古住宅の統計データですが、東京から少し郊外に移住するだけで、物件価格が半額に下がり、そして、倍近い、広い土地の戸建て住宅に住むことができるのです。
以下、REINSの統計データからの抜粋・制作したものです。
郊外や地方に移住する場合の検討事項
さて、実際に東京で働いていたビジネスパーソンが、会社や職業的な環境をクリアして郊外や地方に移住する場合、以下のような条件を検討しましょう。
・通勤は必要か:通勤の必要があるのであれば、何らかの方法で通勤可能かを考えましょう。現実的には、職場らの距離を最高でも100㎞以内、できれば50km圏内がベストです。ただし、週に1回程度の通勤であれば、距離を気にする必要はないでしょう。
・事務所は必要か:テレワークで仕事ができるのであれば、事務スペースが必要かどうかを検討しましょう。自宅がベストですが、自宅で仕事ができない場合、SOHOやコワーキングスペースが近くに完備されているかどうかを検討しましょう。
・職業や会社を変更する場合:移住に関して自治体のサービスが受けられる可能性があり、転職するということも1つの選択です。また、正社員から請負契約変更、または起業するなど、思い切って職業を買えるのも面白いかもしれません。
トカイナカ(都会田舎)に住もう!!移住で狙い目の地方都市や首都圏の衛星都市
都会であるのに田舎暮らしができる、又はその逆で、田舎の地方都市なのにインフラは完全に整備された大都市並である都市が日本にはたくさんあります。つまり、日本、特に本州などの太平洋ベルト地帯は、戦後高度経済成長の遺産により、住もうと思えば、どこに住んでも、それほど不便ではないのです。
しかし、一方で、買い物や教育などの生きていくうえで必要なインフラが整備されていない、つまり、コンビニやスーパーに行くのに何十分もかかり、最寄り駅や最寄りICなど存在しない地域もあります
。生活していくうえで不可欠な設備が存在しないような田舎(山の中や無人島)も多く存在し、このようなところに都会から転居して住むとなると、田舎暮らしの豊かさよりも、買い物などのわずらわしさというデメリットが際立ちます。 程よい田舎暮らしは、人間的な感覚を取り戻すには、とても有益です。
したがって、都会からの以上の場合、豊かな自然がそこそこあり、また、食品、無日用品をの入手が容易で、車や電車での交通の利便性もよい、ある程度都市化された田舎町「トカイナカ」がお勧めなのです。
トカイナカの定義は千差万別ですが、私は、東京などの「大都会から比較的近い郊外の田舎町」又は、首都圏などの大都市圏から隔絶された「田舎の中で、一部都市化されている中核市などの地方都市」がこれにあたると考えています。
東京都などの郊外の田舎町を狙おう|多摩地区や西湘・横須賀、房総半島でプチ田舎暮らし
東京都に勤務又は拠点を置いて活動する職業の場合、やはり都心まで1時間くらいでアクセスできる距離感がベストです。これに該当するような田舎町は、内容で意外とたくさんあり、東京を中心に考えると、多摩地区や三浦半島、つくば周辺などが狙い目となります。
関東近郊で田舎暮らし+都市の利便性を考える場合、距離感を理解するには、動物の名前や植物の名前のJRの駅を思い浮かべていただくとわかりやすいでしょう(例えば、茨城県の取手(鳥)、牛久(牛)、東京都八王子(ハチ)、埼玉県の熊谷(クマ)は、上記地図の概ね50km圏に位置します。)
さて、冗談をさておき、各、おすすめの対象地域の解説をしていきます。
東京都西部多摩地区:西東京市や調布市、稲城市以西の多摩地区は自然が豊かで、しかも都心へのアクセスが容易なため、田舎暮らしにはおすすめです。ただし、地価はそれでもやや高めなので、都心のマンション暮らしの代替として選択肢に上がります。例えば、都心の中古マンションからの買い替えやいますでいるマンションを賃貸として収益物件としするなど、多くの選択肢が考えられます。
横須賀市などの三浦半島:都心からのアクセスがよく、通勤も可能です。三浦半島南部まで行くと、大自然が堪能でき、特に海の近くに住みたい方にはお勧めのエリアです。多摩地区に比べて地価はやや安め。葉山や逗子などの一部の高級住宅街は別として、西の相模湾側、交通アクセスを考えると東の東京本革の横須賀がオススメです。
箱根や小田原方面などの神奈川県西部:神奈川県はそれほど面積が広くないので、西に行っても都心から100Kmも離れていません(100km離れると静岡県に到達します。)。したがって通勤を考えると、首都圏の中では千葉方面、埼玉方面よりも同距離で大自然が堪能できます。三浦半島同様、湘南地区の鎌倉などの一定の高級住宅エリアを除き、地価も安めで、平塚や小田原などは交通の便もよく、オススメです。
中核市などの地方都市を狙う
逆転の発想で、田舎の中の都市部を狙うという選択肢もあります。これは、東京などの都心部へのアクセスは相当の時間と労力を有する覚悟が必要ですが、たまにしか出勤しないような職場環境であればベストな選択肢といえます。
首都圏でオススメなのは、
北部エリア(埼玉、栃木、群馬):50km圏では、前橋、高崎、宇都宮などの大きな地方都市、もっと足を延ばせば、日光市などの別荘地
東部エリア(茨城、千葉):水戸・土浦・取手エリア、つくば・流山・我孫子エリアなどのいわゆるチバラギエリアですが、茨城県方面が意外と交通の便がよく、通勤圏でもありお勧めです。
南部エリア(神奈川県三浦半島周辺):三浦半島南端や伊豆大島などの東京都の離島(大島まで2時間弱)
西部 エリア(神奈川西部、静岡県東部、山梨県中西部) :富士吉田や御殿場などの富士山周辺、甲府市、また、長野県の佐久市、小諸市、静岡県の熱海市、沼津市など
選択肢は無数にあり、夢は広がりますね。
この中で、東京に割と近い地方都市として、特におすすめなのが、熱海、沼津(静岡県)、富士吉田などの富士五湖エリアです。
移住の場合に活用したい制度
移住補助金や物件のあっせんなど自治体独自に実施している場合もあります。
例えば関東近郊であれば、以下のような実施自治体があります。詳細は各自治体のサイトでご確認ください。
山梨県: 東京圏から山梨県( 甲府市、南アルプス市、昭和町、小菅村を除く市町村で実施 )へ移住で最大100万円.「移住支援金制度」 |
静岡県: 東京圏から静岡県に移住して就業または起業した方に最大100万円を支給する「静岡県移住・就業支援金制度」 |
千葉県: 千葉県は、各自治体の移住支援制度一覧(リンク)を掲載しています。 |
神奈川県: 神奈川県は、各自治体の移住支援制度一覧(リンク)を掲載しています。 |
埼玉県: 東京圏(東京都、千葉県、神奈川県)から埼玉県内の9市町村( 秩父市、飯能市、本庄市、ときがわ町、横瀬町、皆野町、小鹿野町、東秩父村、神川町 )に移住し、中小企業等に就業した方または起業した方に対して移住支援金(世帯100万円、単身60万円)を支給 。 |
茨城県: 東京圏在住で23区に通勤する方が、茨城県に移住し、就業又は起業等しようとする方が、移住支援金の要件を満たす場合に、世帯100万円、単身60万円の移住支援金を支給 |
栃木県: 東京23区在住の方又は東京圏から23区に通勤する方が、栃木県に移住し、就業又は起業等しようとする方が、移住支援金の要件を満たす場合に、世帯100万円、単身60万円の移住支援金を支給 |
群馬県: 各自治体ごとに様々な支援あり。 各自治体の移住支援制度一覧を掲載しています。 |
移住する際に最も重要である「家」の取得、賃貸
地方移住する場合、土地勘がなく、不動産を探すのに苦労する場合があります。例えば東京の不動産会社に物件の検索や仲介を依頼する場合、物件価格が安く、また、交通費も発生するなどの理由で難色を示す業者も多いと思います。したがって、移住先の業者に不動産業者に依頼することが大半だと考えられますが、
依頼する場合、最低限、以下のような方法で物件の目星をつけておきましょう。
各自治体の空き家バンクを活用:
いろいろな自治体が独自に空き家バンク(サイトなど)を制作していますが、操作方法が自治体ごとに異なり、また、掲載物件のボリュームも自治体ごとにまちまちです。しかし、中にはお得な物件もありますので、少なくとも移住先に選定した自治体の空き家バンクを覗いてみましょう。
不動産検索サイトの空き家情報を活用:
アットホームやSUUMO、ホームズなどの不動産検索サイトにも空き家情報が掲載されています。
REINSを活用:
不動産流通機構の業者用サイトにもたくさんの安価な物件が掲載されています。不動産仲介業者は物件価格が安いと、報酬が安くなるため、特に東京の業者は、地方物件や首都圏郊外の物件には積極的ではありませんが、物件取得を考えている場合、REINSの売れ残り物件の中に掘り出し物が沢山あるのも事実です。
いかがだったでしょうか。今回は、テレワークに伴い地方移住、郊外への引っ越しを考えている方向けに解説いたしました。会社や職業により、そうはいってもなかなか難しいと思われますが、やってみると意外と簡単にでき、また、別荘・別宅、実家などを地方にお持ちの場合、お試しで長期に別荘等に住んでみるという方法や、最近は民泊やホテルの長期滞在、マンスリーマンションも安価な料金で契約できるものが多いので、ぜひ、最初の一歩を踏み出してみていただければと思います。
筆者
行政書士、会社役員。東京都に事務所を開業し自身は地方在住し、東京に通勤。2020年、20年間放置されていた廃墟をDIYでリフォーム居住。ローコストリフォームを推奨している。
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